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「ええと?」
「ええとじゃないって。酒井。あいつ、最近、新藤さんにご執心じゃない?どこからどう見ても、わかるっつーの。」
チーン。
お仏壇の鈴の音が聞こえた。
「気のせいじゃないですか?課長は社内恋愛はしないって前に聞いた覚えがありますよ?」
うん、これは間違いない。
「あー、それね。それって、新藤さんが原因って知ってる?」
お箸で摘まんでたウインナーがお弁当箱の中にポトリと落ちた。
地面じゃなくて良かった。
セーフだ。
「はい?何ですと?」
「やっぱり、知らないかぁ。何年前だかにね、新藤さんと酒井、もともと教育係と新人で話す機会も多かったし、新藤さんが使える子だったもんだから、酒井も気に入って新藤さんに仕事をよく押し付けてたじゃん。」
押し付けてと言うか、普通に頼まれてただけだと思うけどなぁ。
「普通に頼まれただけですよ。」
「まーね。それが面白くなかった子達がいてね。酒井、知ってたんだよね、その子達が新藤さんのことを悪く言ってるって。まぁ、僻みよね。そんなときにさ、その子達のうちの一人が酒井に告白したのよ。」
ドクン、ドクン。
そっか、課長、モテそうだし。
うん、有り得る。
「で、俺は別に好きじゃないからって言ったんだけど、そしたら、その子がね。酒井さんは新藤さんが好きなんですか?いつも新藤さんにばかり仕事を頼むしとかなんとか、言ったみたいなの。言いがかりよね。」
ドクン、ドクン。
そんなやり取りが、私の知らないところであったとは・・・。
「で、このままその子を放置しておいて、新藤さんが嫌な思いをしたらとかって考えたんでしょうね。『俺、社内恋愛はしない主義だから。面倒くさっ。』って言ったんだって。」
すべて、初耳。
「で、新藤さんがまた悪く言われたりすると仕事もやり辛くなるだろうと思って、色々考えた結果、誰に対しても無愛想になっちゃったのよね~。」
「はははっ。」
「まぁ、見た目も悪くないし、出世頭だから女の子にしてみれば有望な結婚相手よね。」
結婚相手!!!
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