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時計を見つつ、仕事量を見つつ、ペースを上げて仕事をこなしていく。
定時にあがる気なんだから、それまでに終わらせてしまいたい。
急ぎの仕事ではなくても、余裕を持っておきたい。
そんな感じ。
「新藤さん、ちょっといい?」
課長に呼ばれて、ドキっとしたけど、まぁ、仕事だから立ち上がって課長の席に。
「この資料ってさ、もっと詳しいやつ、どこにあるか知ってる?」
「資料室の棚ですかね。必要なら取りに行きますけど。」
「俺も場所、知っておいた方が、今後のためか。新藤さんがいないと資料の場所さえわかんないとか、シャレにならないし。一緒に行くから、教えて。」
そう言えば、もう何年も資料系は任されっぱなしだったなと思う。
昨日みたいに私がいなくなったときに、緊急で資料が欲しくて、場所がわからないとか、困るのか。
立ち上がった課長と共に、上のフロアーの資料室まで歩く。
無言で。
沈黙。
空気が薄くなってくる気がする。
仕事中なのに。
ガチャリと開けられた資料室の中の電気を点けて。
目的の場所まで案内する。
「多分、このあたりなんですけど。」
棚を見上げて、目的の物を発見した。
「課長、そこじゃないですか?」
気がつけば、すぐそばに課長がいた。
資料室独特のなんとも言えない微妙な匂いと、課長の匂い・・・。
あっ。
イトちゃん、課長の匂い、今嗅いだよ。
ドキドキするね、確かに、ドキドキする。
課長が手を伸ばして、目的の物を取り出した。
うん、戻ろう。
「じゃぁ、私はこれで・・・。」
方向転換、しようと思ったら、掴まれた肩。
ビクッ!!!
いや、するって、話だよ。
「まだ、用事、済んでないよ?」
「ええと、他にもお探しの資料が?」
課長から間合いをとって、身を翻して肩に置かれた手を退けた。
異常なドキドキ。
資料室で二人きりってさ、オフィスラブじゃないんだから。
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