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「水谷、さっき叫んでただろ。マジっすかって。その後、やる気出てきたって。あれって、何?水谷とデートでもするの?」
はっ?
何で私が水谷君とデート・・・。
何となく、足元を見ていたけれども、いったいどんな顔をしているのだろうと好奇心。
顔をあげて、課長の顔を確認。
真剣。
「ええと・・・何か、勘違いなさってますよ?」
「・・・。」
「水谷君は、多分安田さんが好きで、安田さんには彼氏がいるって思ってて。いや、この前までいたんだからそれはそれなんですけど。別れたって聞いたから、それを教えてあげたら、マジっすかになってやる気出てきたに繋がったんですけど・・・。」
たっぷりと、たっぷりと3秒以上の沈黙。
「恰好悪・・・。」
ぼそりと課長が呟いた。
まぁ、思いっきり勘違いしてるし、恰好良いとは言えないだろうけど、そんな姿の方が人間臭くて好ましい気もしなくもない。
「先、戻りますよ。」
「ちょっと待った。週末はやめておこうって言ったけど、人生初デートの相手はやめないからな。」
ドクン。
ドクン。
ゴクリと唾を飲み込んだ。
「返事して。はいとか、イエスとか謹んでお受けしますとか。」
はい?
全部肯定じゃん・・・。
「いいえとか、ノーとかご辞退させていただきますはないんですか?」
可愛くないとは思うけど、聞きたくなるんだから仕方がない。
ヘラっと笑ったと思ったら。
「ないよ。」
ドクン。
ドクン。
課長が笑った顔にもドキドキしたけど、否定の選択肢をないと言い切ったことにもドキドキだ。
「って言いたいけど、無理強いはできないな。落ち着いた頃、見計らって誘うから前向きに考えておいて。」
去って行く課長を見て、思った。
言い逃げじゃん。
ドキドキさせられてる。
大人しく、デート行きましょうって言えば良かったかな。
脱力。
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