0人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ早い時間だった為二人共用意されていた私服に着替えて、陽菜を抱かえたユキがバスルームの引き戸を開けると珠里夜が何やら物をあちらこちらへと退かしながら大掃除をしている最中なのを目撃する。
《おや。出たんですね》
昼食の事や、何か手伝う事は有るかどうか聞く前に先に気付いた彼女にそう云われて更にこんな事を云われてしまう。
《さっそくですみませんが、見ての通り今私は多忙です。魔女としては見られたく無い事や物も大量に有る為、貴方達は外食して夕食付近になったら帰って来なさい。ただし春に無理させないように。》
と、これを聞いた陽菜はユキと二人で何処かへ行ける事に心から大喜び。しかしユキは今日はもぅ勘弁してくれ…。と頭で云って小さく溜息をしながら彼女の方を見たが、本当に魔術書やら水晶玉。その他にも色々と自分だけに分かるように仮置きしたり何やら陣を書いたりしていて、かなりの時間が掛かるだろう事と、子供二人が居たら迷惑を掛けるのでは無く、むしろ邪魔なんだろう事が分かり、ユキは胸奥でくすぶっている欲望に蓋をするつもりも含め、軽く頭を下げて出掛ける意を伝え、場所の確認を取る。
「分かりました。それなら下界に行って来ても良いですか?」
《賛成です。さっきの今なんだから、またあんなクズに出くわしても困るし、下界が良いでしょう。》
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます」
ユキは玄関から注意深く外に出た後も中で作業を続けている彼女に一度軽く頭を下げてから引き戸を閉め、純白の大きな翼を広げて上空に舞い上がった。第一の目的地は魔物禁止区域近くにある下界に降りる為の下界通過口だ。
最初のコメントを投稿しよう!