第3章~約束~(冬の華編)

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下界通過口とは魔物禁止区域の境界線が貼ってある所より十メートル程出前に設けられている出入口で、体格の良い大人の男二人が並んで入れる程の大きさがあり、下界に降りる時などに利用する扉のような物だが、何故、いつ、誰によって造られたかは若い世代の天上人で知っている者はいないに等しいが、年寄りの間で流れる密かな噂では、同じような出入り口が魔界の境界線が貼られている場所の近くにも有るとか無いとか…‥。だが、そんな事、今のユキにとっては全くどうでも良い話しで、問題は魔界の者が魔物禁止区域付近や、その境界線を越えて来ている者がいないかどうかと、これから陽菜と二人で下界に降りるという事が問題なのだ。 【ねぇユキ、ユキと下界行くの初めてだね?】 「そうだね。」  …そうなのだ。下界には本来四季を届けに行く以外用が無い為、自分の取り持つ季節以外の目的では基本行かない世界。そして上級神である自分達には翼がある為、翼で上手く飛べるようになったら一人で行って帰ってくるのが当たり前なのだが、どういうワケか陽菜は生まれてから未だに翼を出した事が一度も無いらしく、ハッキリ云って飛べない。だから前々から下界に降りる時は珠里夜の世話になっていたと最近になって聞かされたユキは、彼女と共に暮らし、穏やかな日常を過ごしていたあの頃から春先になると毎回数時間程出掛けて来ると云って彼女が一人で出掛けていたのは、こういう事だったのかと知ったワケだ。が、だからこそ彼を抱かえて飛行している今は気が重い。 なにせ、こんなんじゃいつでも簡単に誘拐出来るし、何より今日はクリスマスだし、やたらハシャいでて可愛いから、だから…間違いを起こしたらどうしろって云うんだ!?
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