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その道を普段から歩き慣れているリザは、簡単に捲けるとたかをくくっていた。
しかし、足音はゆっくり歩いているように聞こえるのに、だんだん近付いている気がした。
息を切らして走るリザの手首を何かが掴んだ。
その手にひっぱられて小路に入ると、小さな少年がいた。
少年は「静かに」と言ってリザを自分の後ろに隠れるよう促した。
あの影は消え、その場の張り詰めていた空気が元に戻った。
「えっと……。ありがとう。あなたの名前は?」
「俺の名前はレイだ。それより、お前はあいつの顔は見たか?」
「そうだった。あいつは何なの?何か知っているの?」
「まず、こっちの質問に答えろ」
目の前の小さな少年に命令口調で言われるのにムッとしたリザだったが、自分が冷静さを失っていることに気が付きひと呼吸した。
レイはリザのその行動をじっとみている。
「見えたと言っていいのかな?顔なのかわからなかった。何も無かったようにも見えたし、口や鼻があったようにも見えた。」
「そうか。ここじゃなんだから、どっか人に聞かれずに話せるところはないか?」
リザは、店の裏口の入ってすぐのところにある地下倉庫の中にレイを案内した。
ここは、リザが仕事をサボる時によく使う場所だ。
中には木製のテーブルと椅子があり、二人は向かい合うようにして座った。
「まず、あの黒い影は処刑人だ。」
「処刑人?あのお婆さんは何か悪いことをしたの?」
「あぁ。したよ。この世界で最悪の罪を犯した……嘘を付いたんだ」
「もしかして。嘘を100個ついたら死ぬとかいうあの噂?本当だったの?」
レイは「今日で丁度100回目を付いたんだ」と、言ってずっとリゼと目線を合わせずに一点を見ている。
「この地域は他との交流が少ないからな。他の国では周知の事実だ」
「そうだったんだ。知らなかった」
少し間が空く。
暫くしてレイが口を開いた。
「処刑人は神によって作られた人外だ。見られてはいけないという決まりらしい。だから……お前はきっと狙われる」
その言葉を言い終わると共にドシンという音がした。
再びあの老婆の死に際と同じ音がした。
リザは急いで店に行こうとした。
それを制止したのは再びあの手だった。
「あいつの狙いはあなたです。今行くのは危険です。」
レイの言葉は敬語になっていた。
その声は届かず、リザはその手を振り切った。
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