2人が本棚に入れています
本棚に追加
ドサッ。
リザが音の方へ振り返ると、そこにはレイが倒れていた。
「どうしたの?大丈夫?」
「すまない。魔力が切れた。気配を消すためにずっと結界を張っていたから」
レイの結界が消えたのと同時に地上の処刑人がリザの居場所に気が付いた。
処刑人は客から手を離し、地下室への扉へと走り出した。
扉の前で立ちはだかる人物がいた。
それは、リザの父親だった。
「こっから先は行かせない」
大きな斧を持った処刑人を前に、勇敢にも立ちはだかるリザの父親だったが、その目はただ目の前の状況を映し出しただけだった。
処刑人が斧を振りかざすと、その斧は目の前の小さな壁から腕を肩から引き剥がした。
痛みで気を失いそうになるが、それでも娘のことを思い、もう一度立ちはだかる。
その声を扉の反対側で聞いていたリザの目には大量の涙が流れていた。
「しつこいやつだ。だが、これで終わりだ」
心のある生き物のものとは思えないその声がその場に響く。
回りにいた客も逃げて死体が転がるだけの店内が、一瞬にして静まりかえる。
「しつこいのは貴方ですよ。どこまで付いてくるのですか?」
レイによって蹴られた扉が処刑人に当たり、斧はその扉に突き刺さる。
大量の血が流れる床に倒れこんでいる片腕のない父親にリザが駆け寄って行く。
「お父さん!」
「ごめんな。一生側に居て守ってやるって言ったのに……」
「そんなこと言わないで!お父さんの謝る姿なんて見たくない!お父さんは私の尊敬するお父さんだから……だから、泣かないで」
「……その言葉が聞けただけでお父さんに後悔はないよ」
にこやかに笑いながら涙を流す彼の体は、力がなくなり冷たくなっていった。
そんな父親に抱き付きながら人目も憚らずにリザは泣いていた。
「関係ない人まで殺すのか処刑人っていうのは」
「今回はやむ終えなかった。気配が途中から薄くなっていたからな」
「どんな理由があっても関係ない人まで殺す必要はないだろ」
「貴様が結界を張らなければよかったんじゃないのか?」
レイはその言葉に動揺も見せずにただ険しい顔をする。
処刑人は気色の悪い声で高笑いをした。
「今まで会った処刑人でこういうことをしたのはお前がはじめてだったからな」
「ほぅ。他にも俺の同族に会ったことがあるのか」
「あぁ。だから、お前らの弱点もよく知っている」
レイはマントの下に隠していたナイフを両手に構えた。
最初のコメントを投稿しよう!