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「遅くなったなぁ…門限何時?」
中山くんは時計を見ながら
私の乗るN行き列車を待ってくれている。
「7時なの」
「女の子だから、そのくらいだよな」
「中山くん、お姉さんいるんだよね?
何歳?」
" 血が繋がらないお姉さん "
確か、そう言っていた。
家庭に何か事情がありそうだ。
「21歳だよ。
働いてるから、門限はねぇよ。」
「五つも離れてるんだね」
到着時刻まであと五分。
まだ
一緒にいたい。
「ケロちゃんは、男兄弟いる?」
「いるよ、弟」
まだ小六の可愛い弟。
「へぇ………あ、悪い、電話出るよ」
先ほどと 同じ着うたが 駅のホームに鳴り響く。
「あ、ごめん、取り損ねて、
………ん?友達と一緒だよ」
少し、話しづらそう。
____彼女、" レイ "さんかな?
「だから、友達だよ、バンドの!
なに勘ぐってんだよ」
イライラした中山くんの背中。
やっぱり、彼女からだ。
私は
切り刻まれそうな気持ちを隠すように、
カバンから本を取り出して読んでみる。
「俺は、
レイだけだよ」
気持ちは
粉々に切り刻まれた。
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