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「中山君、いつもより派手だね……」 私がいつも乗降する駅から列車の中、 中山くんと並んで立った。 今日は特に混雑した車内で 彼の私服はとても目立っていた。 「あのひと、ミュージシャン?」 知らない人が見ても分かる格好。 季節は初夏だというのに 「革ジャンとブーツは暑いな、恥ずかしくなってきた」 普通の服で来た私は苦笑い。 ボランティアをする高校生バンドとして 売り込みに行くんだから プロの真似事みたいな格好は効果ない。 あくまで私の考え。 この間のライヴを 校長が録画し、DVDに落としてくれていたので それを持参し、 「二時に約束していた、O高校の軽音部です」 受付で アポを確認してもらった。 「お待ちしてましたよ!」 テレビで見たことがあるアナウンサーと いかにもクリエイティブな知的な男性が 2人を 視聴覚室に招き入れてくれた。 「白石さんのお知り合いなんですね」 「はい」 ちょっと緊張気味の中山くんから 笑顔が消えている。 あんな大勢の前では歌えるのに 面接スタイルは苦手なんだ。 「高校生バンドは沢山いるからなぁ」
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