恋-2

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「中山くん、おかしいよ、やってもない罪かぶるなんて」 ロッカーの荷物も リュックに入れ、 帰り支度を黙々と続ける中山くんは、 「谷口たちの事は 言いたくないんだ」 少し 怖いくらいに 冷静な目で私を見た。 「…だから、どうして?」 開けた窓から サッカー部のかけ声や、早々に夏を主張する蝉の声が 容赦なく入ってきて、 小さくなった、中山くんの声を、 かき消してしまいそうだった。 「河合さんが、あいつらにヤラレタって噂が 本当なんだって みんな思っちゃうだろ?」 中山君の 金髪に似た茶色い髪から いつもの 甘い香りが漂う。 「俺は、こんな風にしか ケロちゃんを守れないから」 それくらい、 二人の距離が縮まった。
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