恋-2

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「退学?」 耳がおかしいのかと、もう一回聞く。 「なんで?!」 穂高先輩が、中山くんの肩を掴んだ。 「ねえさんの事が学校にバレてた」 「!」 「はっ?!恋愛なんか自由だろっ?」 穂高さんは、顔に怒りを表して、職員室の教頭の所へ行こうとした。 「レイが妊娠したことが 校則違反なんだよ」 「…………あ」 …………____きっと 木山さんだ。 彼女しか、私と穂高先輩以外知らないはず。 ____不純異性交遊。 みんなやっている事でも、 明らかな証明の"妊娠"は 学校では大問題。 「ばか、そんなん、しら切れよ! 遺伝子検査までしないとわかんないだろ?」 穂高先輩が掴んだ手を、 中山くんは、ゆっくりほどいた。 「……レイは今、 病んでるから ほっとけない」 「退学になったら、 中山くんどうするの?」 中山くんの、呟きみたいな決意に 輝かしい未来を予測できない。 「俺も今、いっぱいいっぱいなんだ また、連絡するから」 パタンと上履きを床に置き、 靴を履いて、脱いだそれを 一瞬ためらいながら下駄箱にいれる、 中山くんの背中が、 とても、細く 線みたいに見えるのは…… 「河 合、泣くなよ」 「…………っ……」 「またバンドで会えるじゃんか」 穂高先輩の 私の肩を抱いた手が 小さく震えていたからで 「あいつは歌うことは 辞めないよ」 私が号泣しているせいじゃない。 「みんなには俺が話すから」 学校を出て行く、 中山くんの 小さな制服姿――― ――――"俺、中山寛太" "ラーメンって言ったら 何味?" "一緒に 軽音部やろーせ" 彼の サラサラの髪と 学ラン姿と話す声が 大好きだった。
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