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思い出した事実が悲しくて、また俯いてしまうと……
えっ………!?
突然の出来事に、ただびっくりして顔を上げた。
一之瀬君が、自分の手を私の手の上に重ねてきた。
私よりもひとまわり以上も大きくて、
温かくて、そして、節ばった男らしい手だった。
そのぬくもりに、
安心感っていうのかな……?
不安が少しずつ薄らいでいく気がした。
心の奥の冷えたものが溶かされていく感じがする。
ずっと感じていたいぬくもり。
「ねぇ、お姉さん……」
「ん……?」
「また、どこかへ出掛けようよ。
今度は、もう少し遠くへ一緒に行きたいな」
「うん、そうだね」
私は素直に頷いた。
この瞬間、私は間違いなく幸せだと思った……
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