故郷

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まだまだ蝉の声が耳に響く、残暑厳しい9月。 マレーシアから無事帰国した山田さんは、タン君コレクションを倍増させていた。 自慢げに見せてくれた現地で撮ったタン君との2ショット写真。 写真の中の山田さんは、本当に嬉しそうで見ているこっちまで幸せな気持ちになってくる。 今は毎日、辞書を片手にタン君にメールを送る日々だという。 私と一之瀬君の夏季休暇はと言うと…… 夏季休暇はシフトの関係上かなり前に希望を師長に伝えなければならない。 希望締切は確か6月くらいだったかな。 その頃、一之瀬君とは親しい間柄でも何でも無かったから休暇を合わせるなんて事は当然していなくて 私は、毎年参戦しているライブに合わせて休暇を取っていたし 一之瀬君はと言うと 彼も毎年、仲の良い専門学校の年上のお仲間である後藤さんと旅行をしているそうで夏季休暇をその旅行に充てていた。 北海道の観光名所である五稜郭でふざけたポーズをとって笑う2人の姿や 大盛りのイクラ丼を豪快に頬張る姿が収められた写真を一枚一枚楽しそうに見せてくれながら 旅の思い出を一之瀬君は語ってくれた。 イクラ丼は、あまりの美味しさに思わず2杯目もおかわりしてしまったそうで 同様の物をお土産として持ってきてくれていた。
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