故郷

3/18
8346人が本棚に入れています
本棚に追加
/1520ページ
とこぶしで漬けてあるという珍しいイクラで、 つやっつやに輝いて、口に入れればとろけるほどに甘くて、これぞ本場のイクラって感じがした。 「それでお姉さん、今度の休みはどこに行く?」」 旅の思い出話に一段落つけると、彼は言った。 「う~ん」 考え込む私。 彼とはちょくちょくいろんな所に出掛けてるから、簡単には新しい行き先が浮かんでこない。 「行きたい所、どこへでも連れていくよ」 いつもの調子で、彼はニコニコと笑った。 大抵、私が行き先を決めて、彼が必要な事を調べてくれる。 そんなパターンが出来上がっていた。 「あっそうだ!お兄さん、滝が好きだったよね?」 「うん、好きだよ」 閃いた! 「毎年行ってる滝があるんだけど、今年はまだ行ってないんだって。 一緒に行こうよ」 「いいよ、それって、どこにあるの?」 「郡上だよ」 「郡上って確か、お姉さんの地元だよね?」 「うん、そうだよ」 私の生まれ故郷である岐阜県郡上市。 一之瀬君と一緒に一度、訪れてみたいと思った。
/1520ページ

最初のコメントを投稿しよう!