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そんな感傷に浸っていると、また懐かしい建物が……
「あっ!あそこ!あの神社の近くが私の実家」
土俵が併設された森の一角にある小さな神社を通り過ぎていく。
「実家、寄らなくて良かった?」
一之瀬君は気を遣って聞いてくれる。
「今日は、いいよ」
「滅多に帰らないんでしょ?」
「大丈夫だよ!それに、今日はお兄さんとのお出掛けなんだから気にしないで」
実家なんて寄られたら、きっと気まずいだろうに……
声を掛けてくれる一之瀬君はやっぱり出来た人だ。
「あそこで毎年、秋祭りがあるんだけどね。
獅子が怖くて、小さい頃は逃げ回ってたんだよ」
「へぇ、オレの実家の辺りはそんなの無いや」
話しているうちに、どんどんと懐かしい記憶が甦って来て
100円を握り締めて駄菓子屋で買ったお菓子を境内で食べた事や
大晦日には紅白歌合戦を観た後に、大雪の中、除夜の鐘をつきに行った話をする。
その一つ一つに相槌を打ちながら、何かしらの感想を一ノ瀬君は述べてくれる。
自分の過去や、育った場所を知って貰えるのは何だか嬉しい。
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