8347人が本棚に入れています
本棚に追加
/1520ページ
申し訳ないけど、恐怖心いっぱいの彼の顔が面白い。
「私、小さい頃から花粉いっぱい吸ってきたから免疫ついてるのかな。
スギ花粉の嵐みたいなのも見た事あるし。
お兄さんも1回、刺激を受ければ逆に花粉症が治るかもよ」
「恐ろしい事言うね。
お姉さんもそろそろ体内に取り込んだ花粉がキャパオーバーになって、一気に花粉症になるよ」
一之瀬君は、拗ねた様な顔で反撃してきた。
そんなくだらない事を言いながら、急こう配の廻りくねったのどかな田園風景の山道を登っていくと、
目的地の駐車場が見えてきた。
夏休みの観光シーズンを過ぎているからか、停めてある車もまばらですんなりと停車できた。
「朴葉ずし」とか「岩魚の塩焼き」と、メニューが書かれたお食事処を2軒通り越して、石畳の遊歩道を滝に向かって歩いていく。
「涼しいね」
歩きながら彼が言った。
「うん、そうだね」
ひんやりとした空気が心地よくて、坂道を歩いていてもそれほど苦にならない。
苔生した岩肌に、深緑の植物、遠くからは鳥のさえずりさえ聴こえてくる。
まさしく、自然のど真ん中にいるって感じ。
最初のコメントを投稿しよう!