故郷

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申し訳ないけど、恐怖心いっぱいの彼の顔が面白い。 「私、小さい頃から花粉いっぱい吸ってきたから免疫ついてるのかな。 スギ花粉の嵐みたいなのも見た事あるし。 お兄さんも1回、刺激を受ければ逆に花粉症が治るかもよ」 「恐ろしい事言うね。 お姉さんもそろそろ体内に取り込んだ花粉がキャパオーバーになって、一気に花粉症になるよ」 一之瀬君は、拗ねた様な顔で反撃してきた。 そんなくだらない事を言いながら、急こう配の廻りくねったのどかな田園風景の山道を登っていくと、 目的地の駐車場が見えてきた。 夏休みの観光シーズンを過ぎているからか、停めてある車もまばらですんなりと停車できた。 「朴葉ずし」とか「岩魚の塩焼き」と、メニューが書かれたお食事処を2軒通り越して、石畳の遊歩道を滝に向かって歩いていく。 「涼しいね」 歩きながら彼が言った。 「うん、そうだね」 ひんやりとした空気が心地よくて、坂道を歩いていてもそれほど苦にならない。 苔生した岩肌に、深緑の植物、遠くからは鳥のさえずりさえ聴こえてくる。 まさしく、自然のど真ん中にいるって感じ。
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