故郷

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まだ紅葉の時期には少し早く、人はまばらだ。 剥き出しの砂利の階段を城に向かって歩いてゆき、入り口で入場券を購入する。 特別に、紅葉の柄の入った栞をもらう事が出来た。 「2人でここに来た記念になるね」 彼の何気ない一言が嬉しい。 「凄く綺麗……」 お城の最上階にある見晴し台からは、城下町を見下ろす事が出来た。 辿り付いた時にはすっかり日も暮れていて、 家々に灯された一つ一つの明かりが揺らめいて見える。 まるで宝石みたいに煌めく美しい夜景。 「来月の休みはどれくらい合ってるだろうね」 小さな窓から2人で眼下の景色を眺めていると、一之瀬君が話し掛けてきた。 「まだ、シフト出てないから何とも言えないよ」 「そっかぁ、いっぱい合ってるといいなぁ」 「そうだね……一緒がいいね……」 天守閣の中は暗くて、お互いの顔なんてよく見えなかったけれども… 一之瀬君もきっと、 今の私と同じ顔をしてくれているはずだと思った。
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