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ライトに照らされた彼の顔。
面白いくらいに瞳を大きくしている。
「ほんとに冷えてるね。
これならどう?
あったかいでしょ」
彼が、私の両手に包まれた自分の手をそっと取り出した。
そして、今度が彼の大きな両手が私を包み込む。
……………
心臓が跳ね上がった。
……………
彼のさっきの表情の意味が分かる。
私たちは手も繋いだ事がない。
だから……
ここまで手と手が密着するような経験は初めて。
「うん、あったかいね」
俯いた私の顔は、きっと赤かったはずだ。
そして、私は彼の手からもう逃げるような事はしなかった。
「行こうか」
「うん……」
ゆっくりと手を繋いだまま、歩調を合わせて砂利道を下ってゆく。
彼の手の温もりで、私の冷えた手が少しずつ温かくなっていく。
外気は相変わらず冷たかったけど
心はあったかくて、全然気にならなくなっていた。
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