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ザワリ、ザワリと葉が揺れ
る。何処からか落ちた琥珀色
の実が、桜の木の根の上を跳
ねるように落ちてゆく……
祠に当たった実は大きく弧
を描き、起き上がらない童の
頭にコツンと着地した。
「っ!?」
小さな痛みに頭を上げた童
は、何事かと身体を起こす。
地に転がった実を見て、痛
みの原因はコレかと頭をさす
れば、天を仰ぐ。
「あ――」
童が見上げた先に、白き獣
がいた。
いつからそうしているのか、
白い桜の花弁たちに囲まれた
獣は、フサフサとした尾を身
体に巻きつけて寝そべり。金
色の瞳で童を見下ろしていた。
ただの獣ではない。童は幼
心ながらにそう確信する。
大の大人を二人……いや三
人合わせたような大きな獣。
だが、怖ろしいとは思わない。
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