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「ながいっ!」
のんびりとした青年の雰囲気に反してぽんぽんと調子よく放たれる言葉。どうしていいか分からないでいるうちにぱんぱんと手を打つ音がして、先生の家を出てから黙っていた夢さんが喋りを遮る。楽しそうだった青年がまた困ったような、しょんぼりとした表情になっていてちょっと可哀想だ。
「その話はまたききましょ。なんなら紅葉くんに音楽でも教えてやってください」
え……という心の声が青年と自分の二ヶ所から聞こえた気がした。終わりの全く見えない話を聞かされるのは遠慮したい。一つ一つの楽器に先程のような説明をされたらきりがないだろうし。
青年の方はどうすればいいんだとでもいいたげにこちらの三人を見ている。
「それより。その太鼓何時の間に帰ってきたのかを聞きたいんですが。ああ、日にちだけで良いので」
「三日前だよ」
考えるそぶりもなく出てきた答えに満足したのか、先生はくるりと振り替えって歩きだす。夢さんとあとを追う前に
「ありがとうございました」
青年に頭を下げると、少し驚いたようで、
「あぁ、うん……どういたしまして……」
視線と共に投げられた言葉はとても小さなものだった。
◇◇◇
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