猫の手鏡

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ちりん、そんな音。それが第二回戦の、本戦の開始を告げた。 影が向かってきたことでようやく夢の視界にその姿が映る。見た感じは夢と同じ、あるいは少し下といったところか。弓矢を持ってはいたが得意とするのは接近戦らしい。タイミングを見て跳び下がると先程までいた地面が音をたててえぐれた。 「うわ……いたそうやねえ」  続けて突っ込んできた少年の刀を腕を横に叩くことでそらす。交差するような形でぶつかった腕がしびれるような感じがした。 武器を持たない夢は、基本的に避け続けるか、弓矢か刀を奪うかしかない。どちらも楽なことではなかった。 振り返る勢いで横に一閃された刀を相手の足元に滑り込むように避け、その勢いのまま足を蹴とばす。髪と布、そして、わずかな血が飛んだ。何とか宙に浮くことを免れた少年は、真下に刀を突き立てる。 手応えはない。夢の姿もなかった。しかし、慌てて顔をあげた少年とぴったり視線が会うような高さに跳び上がり、前足の一部を赤く染めて笑う白猫の姿があった。 ぱきりという思いの外あっけない音と弓から矢が数本うち出される音。人の姿になった夢が刀を折るのと、刀を諦めた少年が矢を放つのがほぼ同時だった。狙いの定まりきらない矢はほとんどが背後の地面へ、一本が着物の袖へ、最後の一本が夢の腕へと刺さる。 そして、刀の持ち手側半分もまた飛んだ。少年の腹部目掛けて。
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