猫の手鏡

1/17
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ

猫の手鏡

昔、まだあたしに名前がなかった頃の話。 お母様に手鏡を貰った。黒い手鏡。ほんまは 姿見か鏡台がほしかったのだけれど、鏡の 縁に描かれた鳥が美しかったさかいほしてよ しということにしてあげた。 鏡は好きや。ただ、人間世界を映すだけの 道具。人間世界を眺めるだけのあたし達と よく似とる。稀に人間を引きずり込もう としたり、手を貸したりする者も居るけれ ど、それがまた、あたし達と似とる。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!