猫の手鏡
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猫の手鏡
昔、まだあたしに名前がなかった頃の話。 お母様に手鏡を貰った。黒い手鏡。ほんまは 姿見か鏡台がほしかったのだけれど、鏡の 縁に描かれた鳥が美しかったさかいほしてよ しということにしてあげた。 鏡は好きや。ただ、人間世界を映すだけの 道具。人間世界を眺めるだけのあたし達と よく似とる。稀に人間を引きずり込もう としたり、手を貸したりする者も居るけれ ど、それがまた、あたし達と似とる。
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