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「おや」  前の日と同じように入口の敷布を捲ると、前の日と同じように、穏やかな眼差しをした男が、住居の真ん中に座り、自分を見上げた。 「暴れん坊(シールー)が、また来た」  そして、そう言って楽しそうに笑う。 「その呼び方、止めてくれませんか?」  雨に濡れた髪を軽く振りながら、シルフィは言った。 「嫌か?」  意外そうに言われ、「当たり前ですよ」と、頷いた。 「そう言えば、風の女神(シルフィ)の名前で呼んでって、昔も言っていたな」 「そうなんですか?」 「思い出したんじゃないのか?」 「……うっすらとですけどね」  そう言って、シルフィは、男―セアドの兄であるラルダに近寄った。  暴れん坊(シールー)。  そう呼ばれた時、シルフィは、何のことかわからなかった。  それが幼い日の、自分のもう一つの呼び名であったことを教えてくれたのは、目の前にいるこの男だった。
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