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外に出ると、夜明け前特有のひんやりした風の感触がほおを撫でた。
火照った体には、ちょうどいい冷たさだ。
集落の広場とは反対側の方に歩くと、木々の間から微かな水音が聞こえてくる。
集落の近くに、小さい川があるのだ。
どの集落も、基本的に水辺の近くに作られている。
だから普段、あの湖の水を使うことはあまりない。
だが雨の恵みがない年は、小さい川の水は干上がる。
そうすると、あの湖まで水を汲みに行くことになるのだ。
父がまだ幼い頃、豊かに木々が茂っていた頃は、雨が降らない日が続いても、川がすぐ干上がることはなかったらしい。
しかし大火が起こり、森の木々が育たなくなった今、この小さな川だけでは、生活は―生きることはできない。
シルファは、石がごつごつある場所に降りると、水が来ているぎりぎりのところまで慎重に進んだ。
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