三千世界の烏を殺し

6/8

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 あどけない顔に幸せそうな笑みを浮かべて、とろけた瞳にどろりと狂気を流し込み、新造はただただ、花魁を見つめていた。  その新造の唇に、揺らめく紅がそっと触れる。 「ぁ……」 「遊女の言葉は商売道具。  ……それを誰よりも分かっているわっちが、どうしておまぃの言葉に、ここまで心を揺さぶられるんだろうねぇ?」  花魁の指先が、顎を滑り、襟を滑り、華奢な新造の腰を引き寄せる。 「おまぃの操は、わっちが守る。  おまぃは、わっちのモノにありんす」 「花魁の身代は、わっちが守る。  花魁は、わっちのモノにありんす」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加