新しいクラス

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榊原先生の一言で、他の人の自己紹介聞くつもりないんだろうなぁ……っていうぐらいに女子が真剣に自己紹介の内容を考え始めた。 哀れな田所よ、きっと君の自己紹介も右から左に流されるに違いないと思いながら勝手に同情していると、俺の思いが通じたのか、榊原先生は次に田所を指名した。 「俺は田所篤って言います。ニックネームとかはいろいろありますが、俺のことは気軽にあっくんって呼んでください。人と話すのは結構好きなんで、どうぞよろしく! ちなみに、部活は剣道やってます。あ、あと、好きな動物はウサギです、女の子にモテたいです」 田所は自己紹介を終わらせ、無駄に爽やかな笑みを残して座った。 あっくんはしっくりこないし、今まで通り俺は田所って呼ぶぞ。 ハキハキしてて聞き取りやすい声だった。あんな風に喋ってみたいもんだ。 田所の場合、モテたい精神からあんな風に出来るのかもしれないけど。 よく見りゃ、田所顔整ってるんだよなぁ。 なんか僕の周り、やたらイケメンが多くないか? 気のせいかな? そしてそこからぐるぐると回り、裕太くんの番になった。何を言うんだろう、裕太くん。楽しみだなぁ。 勝手に期待しながら俺は勢いよく振り向いた。ちなみに木下の自己紹介はちゃんと聞いてなかった。 裕太くんはスッと音もなく立ち上がったかと思うと、 「榊原裕太です。帰宅部です」 とそれだけ言って、座ろうとした。 女子がざわつき、男子は明らかに敵意を向けた眼差しを裕太くんに送っている。 もちろん俺はすごいキラキラとした目で彼を見つめているわけですけど、自己紹介にしてはあまりにも短すぎないかな……。
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