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「このガバメントはコピー品じゃなくて本家本元のコルトなんだ。オリジナルのコルトは珍しいんだ。しかも民間用じゃなくて軍用型のガバメントは、更に珍しい。これはヴィンテージものだ。アメリカの銃市場では、プレミアがついてるんだぜ。といっても、拳銃のロールスロイスと呼ばれるコルト・パイソンほどじゃないけどな」
「さすが、詳しいな」
「まぁな。好きだからなぁ。拳銃が」
「俺は銃がまるっきり苦手だ。山で練習したけど、あんなもんちっとも当たらねえ」と、半田アキトモが言った。それに運転席の北田ハルオが頷いた。
「俺は撃って当たらねえどころか、撃ち方も知らねえ」
「簡単だよ」
窓の外を虚ろな表情で見つめた。
「五メートル、いや二メートルまで近寄ったら、標的めがけて引き金を引けばいいんだ。ただし――」
佐藤マモルは夢見るような表情になった。
「弾丸をチャンバーに送り込んだ後、撃鉄を安全位置まで倒してあるのをうっかり忘れてたんじゃ、いくら引き金引いても弾丸は飛んでくんないけどな」
あの佐竹という男はこれから一体どうなってしまうのか。
きっと、消されるんだろう。
親分を護れなかった護衛役の頭上には、太陽は再び昇らない。もちろん、そんな役立たずな野郎が入るべき墓も無い。だから死体は、魚の餌となる。
二日か三日の内に佐竹は欽田組の手でコンクリートを背負わされる。そして、海の底。
あの女はどうなる。知らない。どうでもいい。
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