因縁

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威嚇、されている。 車種はレクサスだった。レクサスが、クラクションを鳴らしている。しかも連発して、佐藤マモル個人を狙い撃ちしている。佐藤に落ち度は無い。コンビニの駐車場を、ただ普通に真っ直ぐ歩いていただけだ。仮に落ち度があったとしても、クラクションでああまでしつこく威嚇されたなら、喧嘩のひとつも買ってやりたくなる。落ち度が無いなら尚更だ。 そのレクサスは、極端なローダウン車だった。 車内を覗いてみた。 極端なブリーチの鮮やかな金髪のヤンキーが、佐藤マモルを睨んでいる。助手席でふんぞり返っている生意気そうな十代前半の少女が、目を細めながらやはり佐藤マモルを睨み据えている。 レクサスの男女は、佐藤マモルを気弱な小市民と勘違いしているのだろう。 運転席の金髪男は、見るからに底の浅い目をしている。多分、頭の引き出しは空っぽだ。無害な弱者を威嚇して鬱憤を晴らし、ついでにオンナの前でいい格好がしたい。どうせ、そんなところだ。
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