因縁

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佐藤マモルは、運転席の金髪男と視線を合わせた。近頃では、こういった連中をヤンキーとは呼ばず、DQNと呼ぶらしい。 真面目な社会生活からはみ出していながら、本当の不良の道を歩みもしない中途半端者。 不良とは、本来はヤクザ用語だ。そのものズバリ、ヤクザ者という意味だ。地方によっては不良(ヤクザ)の事を極道と呼ぶ。だから、不良少年などという言葉は、本来ならおかしな表現ということになる。 それはともかく、不良として、極道として、覚悟も決めず、ただただ一般市民を威嚇するだけの中途半端者。佐藤マモルにとって最も嫌いな人種が今、目の前にいる。 「ひき殺されてえのか。ぶち殺すぞキモオタ」 運転席の金髪男が、火の着いた煙草を投げつけた。 煙草は、佐藤マモルの胸を弾けて飛んだ。激しく火花が散った。 佐藤マモルは、目を細めた。 駐車場の端に停車していたクラウンのドアが開いた。どこからどう見てもヤクザそのものな服装の半田アキトモと北田ハルオが車外に降り立とうとしている。だが、佐藤マモルはそれを手で制した。そうしてから、レクサスに歩み寄った。懐から軍用ガバメントを取り出した。車内でふんぞり返っている金髪の顔色が変わった。 軍用ガバメントを握った右手を頭上に振り上げた。無言のまま右手を振り下ろした。軍用ガバメントの銃把がレクサスのボンネット鋼板をぶっ叩く音が、鼓膜を脅かした。すかさず、左手で金髪男の襟首をつかみ取った。 人間とは思えない異様な怪力を発揮した佐藤マモルは、金髪男をクルマから引きずり出した。そして、流れるような動作で、金髪男の口の中に、ガバメントの銃身を突っ込んだ。
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