地下

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「秋山。てめえが普段やってることを、洗いざらい全部白状しろ」 佐藤は秋山に顔を近づける。秋山は鼻血だらけの顔をひきつらせるだけだ。秋山の極端な細い目。細すぎるそれは、まるで黒い糸だ。 「おい。さっき俺が言ったことを、もう忘れやがったのか」 頭を仰け反らせて反動をつけてから、全力で頭突きを食らわせた。打撃の角度が不味かったらしい。佐藤の額のほうが痛かった。だが、どうにか平静を装った。一度もやったことの無い頭突きを試してみようなんて馬鹿なこと、滅多に考えるもんじゃない。懲りた。二度とやらない。蹴りと違って、頭突きってヤツは案外難しい。 「あのな、秋山。黙ってれば誤魔化し通せると思ってんのかも知れねえが、全部分かってるんだよ。てめえは振り込め詐欺師だろう。雇い主の名前を言え」 「言ったら殺されます」 「言わなきゃ俺が殺すぞ。今すぐ死ぬか。後から死ぬか。どっちか好きなほうを選べ。どっちだ」 秋山。答えない。
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