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高三の夏休み。
夏期講習が面倒で勝手に保健室に忍び込んだ。
ワイシャツ、少し汗ばんでる。上のベストだけ脱いで倒れ込む。クーラーは効いている。俯せのまま枕に顔を埋める。
どうして女に生まれたんだろう。
不可思議な感情が私を蝕んでることが、夏期講習を小さな問題にしている理由。
いつ頃からかと聞かれると、実は良くわからないというのが本音だね。
ちょっと自分がおかしいと自覚したは高校生になってから。
クラスの仲間、ただの仲間。出会ったのは小学校の頃。
いつしか、同性を意識していた。
初めは否定した。恋愛小説を読んだり漫画を眺めたり、柄にもない音楽を聴いて現実逃避をしてみたり。そうそう彼氏も作ってみた。
だけど。
染めた茶色の髪、整った制服、赤いリボンほわほわした空気を纏わせている天然さん。稲葉儚。彼女のストロベリー色の眼差しが常に頭の中にある。
「あーっ、みっけ!」
いきなり扉が開いて、儚が私に飛び付いてくる。儚の香りが強くなる。本人はじゃれついているだけだという。私の鼓動の変化なんか気付きもしない。
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