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それでも日常が壊れてしまうことを恐れています。
いま抱き締める温もりが消えてしまうことに怯えています。
「ねえ、スナオ。キスの仕方を教えてよ」
私の腕におさまって、儚が囁いた。見上げる瞳が誘うから。
「いいよ。男よりはうまいつもり」
なんて、本番になるのはいつの日か。
私は儚が眠るまでその腕をはなさない。
片想いで終わらせない。
儚は誰にも渡さない。
「ねえ、スナオには好きなひといないの?」
睫毛に隠れているストロベリーの瞳。艶のある唇を震わせて、残酷な言葉を囁く儚が可愛く見える。
この世の摂理をぶち壊しても、私は儚を奪いたい。
そう誓った高三の夏。
あれから卒業して半年。
秋の陽射しが私と儚を抱いている。
儚は、私に引っ付いて離れない。私たちは腕を組んでベンチに座る。
私はというと儚の髪を掬う。風は心地よい。
公園には祭り客が出店を回る姿がある。木々が風にさわさわ揺れる。街は秋祭りで賑わっている。
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