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「儚、いま彼氏はいるの?」
「いないよ。スナオがいるから平気」
「儚。私と付き合って?」
「ん? スナオが良いならいいよ。だけど嬉しいな。私から言おうと思っていたのに」
私の唇を恥ずかしげもなくかっさらって、ストロベリー色の瞳で見詰めてくる。
私といえば――このゲンジツに暫く、言葉を失った。
「でも、よかった。スナオも私と同じで」
同じ。そう、同じ。
頷いてみせる。
「たくさん男のひととつきあったけれどスナオみたいに抱き締めてくれるひとひとりもいなかったんだ」
儚の照れる仕草が間近にある。
上目遣いの瞳と覗く笑窪。
ジーンズにティシャツの私とは正反対の女らしさ。
パステルカラーのスカート。サンダル。キャミソールに薄いカーディガン。頬を控えめなチークで彩って。
胸元には小さなアクセントが揺れている。
さっき夏祭りで買った御揃いのネックレス。小さな石は透明な水晶。ほんとは指輪を勧めたかったけれど無くしそうって儚が言うから。
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