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茜ちゃんは乾いたオレの心に咲いた、一輪の花だ。
二股かけたあげく、他の男の花嫁になる元カノの事で、荒れていた心。
『明日』
駅のうらびれた伝言板に書いた、宛てもない言葉。
明日の続きが見出せなくて。
都会の忙しない日常にも、心が疲弊していた。
その一言を書いたことも忘れかけていたある日、たまたま伝言板に目をやると。
『おでんが食べたい』
可愛らしい文字で、意味不明な事が書いていた。
季節は、夏に入る頃だった。
いくつかのやり取りをして。
いつの間にか、伝言板がひそかな楽しみになってきた時に。
毎夜、決まった時間に決まった回数だけの着信があった。
アドレスを消してはいても、その番号が元カノのモノだと云う事はすぐに分かった。
訳が分からずイライラして。
マリッジブルーなんかクソ喰らえだと、思ってたオレの為に。
『ただの現実逃避!大丈夫!!』
あの伝言板を、どピンクの飾り付けでデコって元気付けてくれた。
お陰で、元カノの謝罪を素直に受け入れて。
どうしようもなく目を逸らしたかった過去に、初めて向き合う事が出来た。
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