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決算を迎える2月は、何かと忙しい。
出張もあったり。彼女とデートも出来ない。
そんなある日。
出張が早く切り上げられて、東京に昼ごろ戻ってこられた。
「居るかな・・・」
茜ちゃんには、向こうを出る前に知らせてある。
【待ち合わせしよ!】
品川駅で待ち合わせ、愛らしい彼女の姿を今か今かと待ち望む。
水族館にしようか。
それともツリーまで足を伸ばすか。
ソラマチ、実はまだ行ってないんだよな。
スマホをいじりながら段取りを考えていると。
「・・・蒼吾?」
聞き慣れた声に、懐かしい香水の香りがした。
視線を上げたその先には、
「加奈子・・・」
元カノだった。
彼女の左手の薬指には、ダイヤの指輪と、シンプルなプラチナリング。
それを見ても、もう何の感情も湧いてこない。
「仕事は?」
「出張で直帰」
挨拶も何も無い。久しぶりねとか。必要無い、短い会話。
「もしかして待ち合わせ?」
女の勘なのか、良い当てられて。
「ああ・・・カノジョと」
素直に笑う事が出来た、その視線の先には。
「茜ちゃん!」
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