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「茜ちゃん!」
わたしを呼ぶその声を振り切るように、回れ右して改札へ逆戻り。
「茜ちゃん!?」
慌てた声の蒼吾くんが追ってくる気配を感じながら、人ごみをすり抜けホームへと走る。
閉じる扉に背を向けて。
荒くなる呼吸を、必死で静めた。
【出張が早く終わったから、昼過ぎなら会えるよ】
蒼吾くんのメッセージに、飛び上るほど喜んで。
初めてのデートに期待いっぱい膨らませて、待ち合わせの場所に行ったわたしの目に映ったのは。
『加奈子』
わたしと蒼吾くんの間に背を向けて立つ女性に、笑顔を向ける彼の顔だった。
オトナ雑誌に出てくるような、ファッション。
背中までゆるく流れる、手入れの行きとどいた髪。
ロング丈のピンヒールの、ブーツ。
モコモコぺたんこブーツに、リュック。
お団子頭に、ぐるぐる巻きのモコモコマフラー。
そんな格好の彼女とわたし。
どちらが蒼吾くんにお似合いかなんて、誰が見ても一目で分かる。
別の男性と結婚が決まった元カノって、もしかして・・・
アノヒト?
零れそうになる涙を、電車の中で必死に耐えた---
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