3 逃げる、わたし

3/5
前へ
/35ページ
次へ
家に帰って、ダッシュでベッドに潜り込む。 「茜?デートじゃなかったの?」 ママの心配そうな声がするけれど。 嗚咽が漏れないようにするのが、精いっぱいだった。 しばらくして玄関のチャイムが鳴って。 蒼吾くんがわたしの家を知っている事を、思い出す。 わたしは・・・ 蒼吾くんのマンションも、知らない。 何度も遊びに行きたいって言ったのに。 『そのうちにね』 決して家を教えてはくれなかった。 どうして? あの彼女との思い出が詰まってるから? 彼女に向けていた柔らかく、はにかんだような彼の顔。 わたしだけに向けられていたんじゃ、無かった事を知る。 まだ、好きなのかな? 「~~~っ。他の男の人を選んだクセに」 醜い感情が、口から洩れたその時。 「・・・茜ちゃん?」 ためらいがちな彼の声と、部屋のドアをノックする音。 「茜ちゃん・・・どうしたの?」 大好きな彼の声に、また涙が溢れる。 どうして逃げて来たんだろう。 あれが元カノだなんて、決まったわけじゃないのに。 でも・・・ 「茜ちゃん、アイツは・・・」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

472人が本棚に入れています
本棚に追加