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蒼吾くんとは、最寄駅の地下鉄の、うらびれた伝言板を通じて、知り合った。
彼の書いた何気ない一言が、なぜか気になって。
そこにわたしが書き足して。
何度か繰り返すうちに、偶然出会った。
1度目は偶然。
2度目は必然。
じゃあ3度目以降は?
わたしの問いに、
『オレは、運命って信じてなかったんだ』
そう言って、柔らかく笑ってくれた彼だった。
煙草の香り。
大人の男のヒトの、香水の香り。
優しい声。
余裕の態度。
全てがカッコよくて。
すぐに夢中になったんだけど。
『受験が終わったら、会ってくれる?』
あの日、蒼吾くんに泣く泣く言ったセリフ。
3年生の、夏休みが終わったところだった。
受験が終わるまで、蒼吾くんとは会わない覚悟で言った、言葉。
わたしの気持ちを組んでくれて、
『うん・・・待つよ。待つのは嫌いじゃないんだ』
柔らかく笑った彼が、そっとおでこにキスしてくれた。
彼がくれたのは、優しいキスと、5カ月後の約束。
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