472人が本棚に入れています
本棚に追加
「茜ちゃん・・・」
わたしの姿を見るなり、サッと顔色を変えて慌てて改札をくぐる。
「まさか一人なの?!」
大股でわたしに近付いて、腕を取って聞いてきた。
「うん・・・驚いた?」
「はあ・・・」
首を傾げて言うわたしに、大きな溜息をついて。
「おいで」
手をつないで歩き出す。
「蒼吾く・・・」
「今何時だと思ってる?」
わたしの方を見もせずに。
「未成年の女の子が居ていい時間じゃない」
厳しい言葉を放つ。
なんで?
どうして叱られなくちゃ、いけないの?
会いたかったのに。
蒼吾くんは仕事で忙しいから。
卒業を待つだけのわたしみたいに、自由な時間なんてないから・・・
「茜ちゃんが駅で待つなら、もう帰るコールしない」
「・・・」
「親御さんには、なんて言って出たの?」
「・・・」
「茜ちゃん?」
返事のないわたしを訝(イブカ)しみ、足を止めて顔を覗き込んできた。
「茜・・・っ」
わたしの顔を見て、蒼吾くんが息を飲む気配がする。
項垂れるわたしの瞳には、零れそうな涙が・・・
最初のコメントを投稿しよう!