第1章

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雨の拍手が静かになる頃合に、絵の具になるものを探しました。  真夜中なので山の皆は眠っているか、隠れているのが方法ですから、 そんな事、百も承知だと思うごとに、穴ぐらへ手を突っ込んでみては 「おい、いないのか。何か色が奇麗なものはないか。酒を分けるぞ。」 でも、奇麗な木の実やらは美味しいものばかりで、お酒は少しですし どうにも合わないのも、そういう夜もあるものだなと、山男は少しだけ がっくりして、座っていました。  穴から雨がを見にきた奇麗な二匹の狐は、とてもぐっちゃりの山男が 可哀想だから、何かあげられないかと相談しました。お酒も貰えるなら、 梅が実を抱えるほどにした時には、美味しいお酒になるじゃないか。  二匹は山男の背中をさすって、色々な木の実だの葉っぱだのを見せて、 好きなのを取ってもいいから、お酒をください。と言うと山男は元気に 立ち上がって、狐さんたちありがとう。それでは、このお酒は全く全部 あげるから、本当に一番奇麗な色でも貰って構わないか。と訊きました。  狐たちは気にせず、お取りなさい。そしたらきっとまた絵が描けます。 でもお酒は頂きますけど、よいのですかと確り確認しておいたのです。 夜中なので山男が眠くなっていて、朝にやはりお酒を返してと言うかと 気にして、そわそわしたからでした。  山男は眠いどころか、金色に目を輝かせていました。それは二匹の狐の 毛の色が瞳に映って、ぴかぴかしていたのです。山男が二匹の狐を撫でて 黄金の色を全部、手に掬ってしまいましたから狐たちは、真っ白です。  奇麗な毛の色をあげてしまったけど、お酒は全部貰えました。それでも 白い狐も本当は、奇麗な白です。これなら梅の木に嫌われたりもしないと 二匹とも思ったのです。山男は何度もお礼を言って、帰って行きました。  梅の香りが好くなる季節が近くなると、二匹の白狐はとても喜びました。 跳ねて躍り上がったりして、大事にしまっておいたお酒を丁寧に出しては  実がなるまで待て酒の種。と何度も歌ってから、梅の木に挨拶しに行こう そういう事にしようと、真っ白な毛並みで岩向こうへ素早く抜けました。  ところが、梅の木がいた場所は穴ぼこになっていて何もありません。 困ってしまい、近くの木や花に訊いてみました。梅の木はどこでしょうか。  皆が教えてくれた通りに、そうっと静かにバラタバラタ音の鳴らないよう
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