第1章 親指族

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「――うっ……おれに何の用だよ おれは助太刀屋は辞めたんだからな!」 「何を勘違いしているのだ? 只道を教えて貰いたいだけだ」  倒れた男の懐の上で見上げながら、彼女は只道を聞きたかっただけのようだった。 「道? それならその辺の奴らに聞けば良いじゃねぇか? 何もおれに聞かなくても……」 「聞こうと思っても中々気付いて貰えないんだよ。だから、この店に寄ったんだ。此処はよろず屋だろ? 今時珍しいが……」 彼女は男から華麗に降りると、早く自分の用事を解決して欲しいのか男の耳を掴みズルズルと引っ張って行きました。 「ちょっ!!? 痛い痛い! やめてちょっやめて!!! 俺が悪かったから 玩具さん いや、玩具様!」  彼女に引っ張れてる男の様子を残った居酒屋の御客達は呆然と立ち尽くしていた。 「えっと? 道案内だったな?」  数分後、二階へと戻って来ると。引っ張られて赤くなった男の耳は、彼女の小さな手の跡も残っていた。 「そうだ。ん? おぃ? そこ雑だぞ 綺麗に修理しろっ!」  彼女は腕を組んでは少し不満そうな顔をして男に床下の修理の指示を与えていた。 「自分が壊した癖に」 「何か言ったか? 男?」 「いや、別に……」  彼女が壊したのも当然なのだが、男の方が悪いので男の方は頭が上がらなかったのであった。 「そう言えば お前名前は?」  床を修理をしながら小さい彼女を見ると、男は名を説いた。 「私の名は メリサだ」  少し不思議な空気を纏わせ、男に自分の名を告げた。 余程威厳のある名だろうか、彼女は少し男を見下ろしていた……気がする。多分。 「えっと、俺の名前はギンだ。こう見えてもおれは頼まれたらやる方だからな。 好評は良いぞ。あ、彼女や彼氏の作り方とかは流石に わかんないから これだけは頼まれても駄目だって言っておくから―――って?あれっ?」  少しお店の宣伝をしつつ、自分の名前をメリサに告げたが、机に居たハズのメリサの姿がない。 「あれ?あいつは?」  メリサの姿を探す様にその場にかがみ込んではキョロキョロと彼女を探し出した。何だかギンにとっては嫌な予感がした。 すると、 「――を――お願――」 「ん?」  メリサの声が途切れとぎれ聞こえたと思ったら、何処かに電話をしていたようだった。 「おぃ……?何処に電話かけてんだ?」 「え?ピザだけど?」  彼女は、ニッコリとギンに可愛い笑顔で微笑んだ。
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