第1章 親指族

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「誰? 知り合い?」 「いや、別に知り合いじゃな――」  ギンさんが言葉を言い終わらない内にオデコにじゅぅ……と、何か焼けるような臭いがしたかと思ったらギンさんは悲鳴をあげていた。 「酷いわギンさん! あんなことした仲なのに!」 「妄想はやめろ。サツ見苦しい」 「何よツキヨ! それに私はサッちゃんって可愛いあだ名が有るんだからそう呼んでって言ってるでしょ?」  女達は歪み合い互いの頬をつねっていた。どうやらギンはモテオ君みたいであった。 「今のうちに逃げよっと……」  自分の焼けたオデコを抑え、忍び足でその場から逃げようと彼女らの横をササッと抜けるが。 「「何処行くの? ギンさん?」」  二人は息の会うように声を揃えギンを掴まえニッコリと微笑んでいた。悲鳴は多分ない。 「何やってるんだか?」  彼女達の様子を冷静に見ながらメリサは、ピザが配達してくるのを待っていた。彼女にとっては少し待ってる間でも不安の理由があるのだ。 「ったく! 何なんだ! お前ら俺を心配しに来たんじゃないのかっ! 怪我させる気なのか オイ!」 「え? Mなの? ギンさん? 怪我したいの?」 「んな訳あるかっ!」  するとギンにとっては都合が悪い時にピンポーンとインターホンの音が聴こえてきた。 「すいませーん? 宅配ピザニンニンでーす?」  玄関ドアの前にはピザの社員と思われる若い男が立っていた。顔ぶりからすると、まだ入りたてとも思われる。何故わかるかって? 『新人社員』と胸元の名札に書いてあるからだ。 「え? ギンさんピザ頼んだの?」 「いや、実際頼んだのは俺じゃなくて――」 「ギン。私の為に……ピザ頼んでくれたのね? 嬉しいわ」  彼女らはギンの腕を組んで掴んでは、玄関へとずるずると嫌がるギンを引っ張って行った。すると、何処からか小さな声が聞こえたのだ。彼女らは、そこで、やっと小さなお客さんの存在に気付いたのだ。 「ご苦労様 支払いはギンさんにお願いして」  先に玄関に来ていては、何枚ものピザを一人で抱え、スタスタと歩く少女の姿を吃驚するように彼女らは観たのだった。 「隙有り!」  ギンは払いたくない為か、組まされてた腕を払い、サツ達の横を通り抜け逃げようと走った。が。 「ギンちゃん? 今月の家賃を受け取りに? ってあら? 出掛けるの?」  ギンの目の前に、また女性(ガールフレンド)の姿が現れたのだった。
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