第1章

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 立派な門構えの和風建築の屋敷の前に一台の車が停止すると、後部座席から五月カンナが降り、続いてエティア・ハーツも降りてきた。  二人を降ろしたタクシーが走り去ると、カンナは門を緊張した面持ちで見上げる。 「何?緊張してるの?」 「別にそんなんじゃない」  エティアに見透かされて否定したものの、エティアはそれが虚勢だともちろん分かっているのか、クスクス笑っている。 「そういうことにしておいてあげるわ」 「お前こそ緊張したりしてないのかよ。その…挨拶なわけだし」 「何で緊張する必要があるの?たとえ反対されたって聞かないわよ?私が決めたことだもの」  悪戯っぽく笑いながら答えるエティアを見て、こいつはそういう奴だったとカンナが少しだけ呆れながら軽く息を吐くと、もう一度門を見上げて気を引き締めた。 「行くか」 「そうね」  カンナは「五月」の表札の掛かった門の呼鈴を押した。  すぐさま弟子らしい男性が顔を出すと、訪問の話は聞いているのだろう。  陽当たりの良い庭が見える客間へと通された。
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