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「それにしても、本当に情けないな、カンナ。結婚の言葉まで彼女に言わせるとは」
「親父…知ってたのか?」
カンナが驚いて尋ねると、嵐蔵は失言だったと顔をしかめた。
エティアの記者会見で彼女から結婚宣言は出たものの、相手であるカンナは変装していて素性も明かされていない。
「知ってるも何も、エティアさんの記事が出てからずっと気にされてましたよ。会見の様子も最初からご覧になっていて、カンナさんの変装も一目で見破られて下手だなって仰ってましたよね?」
「余計なことは言うな」
嵐蔵が俊哉をたしなめるように言うと、苦虫を噛み締めたような渋い顔になる。
「失礼しました」
謝ってはいるが、口許は緩んでいるので完全に楽しんでいる。
「…もうお前も子供じゃないんだ。好きにするが良い」
「先生、それでは誤解されてしまいますよ。会見ご覧になって、あんなに嬉しそうでしたのに」
嵐蔵に睨まれても俊哉は笑顔のままで、エティアはこっそりこの中で一番最強なのは俊哉なのでは?と思った。
「エティアさんと言ったかな。こんな不肖の息子だが、よろしく頼みます」
咳払いをした後、エティアにそう告げると軽く頭を下げた。
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