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「少しも名前覚えてないの?」
「覚えてない……」
誰なんだろう、一体何の理由があって僕にあんな画像を送ってきたんだろう。
彗太は一気にジンジャエールを飲み干すと、少し乱暴に机の上に戻した。
びっくりしたように顔を上げた紗名を見て「ごめん」と、小さく呟く。
大勢のフォロワーはこれまで自分を支えてくれる温かい存在だった。それなのに今はそんな風に思えなくなっている。
たった一度おかしな画像が送られてきた、ただそれだけの事だ。
でも、画面の向こう側で見たことも話したこともない誰かが彗太の事をじっと見ているような、そんな気がした。気味が悪い。
伊沢も同じような気味の悪さを感じたのだろうか。
彗太の感じる怖れにも似た感情を。あの画像を見た時に感じた強い悪意のようなものを彗太は忘れる事が出来ない。
伊沢の場合は自分以外誰もそのクラウドを見ていないと言うのだから、より一層疑心暗鬼になっているのかもしれない。
いつからだろう。フォロワーの数の増減にしか目がいかなくなったのは。始めた頃はフォローして貰えた事が嬉しくて、フォローし返す前に相手のプロフィールやクラウドを見て、その人に合う話題を振るようにしていた。
だからこそ、特徴のない彗太のクラウドにこれだけフォロワーがついた。祐のように純粋なファンではない。それを彗太自身もよく分かっている。
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