絞め殺しの木を刻む少女

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絞め殺しの木を刻む少女

新版フォロワーを公開しています。 これからお読みになる方は、是非新版をご覧いただけますと嬉しいです。 https://estar.jp/novels/24590787 ********** 机の上に放り出された携帯電話の画面に映し出されるSNSサイトを、少女は虚ろな目で眺めている。 「もう止めて……」 そう小さく呟く声をかき消すように、次々と届く少女宛てのメッセージ。携帯電話の上部にそのメッセージの一部が流れていく。 少女の強く噛みしめられた唇にはじわりと血が滲み、その目は壁に掛けられた時計をじっと見ている。 静まり返った家の中にカチリと時計の短針が動く音が響き、また静寂の中に消えて行った。 唇が何かを呟くように動いた。しかし黒ずんだ古い木製時計が打つ0時の鐘に、少女の声はかき消されてしまう。 右手に握られたカッターナイフの刃が、カチカチという硬質な音と共に押し出される。 裏返した左手首を見つめると、少女はカッターナイフを当て一気に引く。 震えとともに体がびくりと強張り、耳触りだと言われる醜い声が漏れると、反射的に少女は口を塞ぎ唇を強く結んだ。ここでは押し殺さなくても良いのに。
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