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見えないモノと見えるモノ
「伊沢相介に送ったフォロワーと同じ人かな」
紗名が濡れた指先をタオルで拭きながらぼそりと言う。
「可能性はあるね。でも確かめようがないし、伊沢相介と一緒に騒ぎ立てたくはないから。諦めるしかないかな。
でもさ、伊沢と僕だけっていうのもなんだか不思議な組み合わせだから、他にも送られてきた人がいるかもしれないし、少し様子を見ていてもいいのかも」
「様子見かあ。ねえ彗ちゃん、写真の事やっぱり大人に言ったりしないよね」
顔を上げてじっと見つめる紗名から目を逸らした彗太は、唸るように「うん……」とだけ答えた。
「わかった。ね、まだ祐様から連絡ないの?」
気持ちを切り替えるように、紗名が明るい声を出す。
「あ……忘れてた」
「彗ちゃんったら、何の為にこの店に来たのか忘れたの?」
そう言って紗名がくすりと笑うから、それにつられて彗太も自然と笑顔になる。
テーブルの上に置いてあったスマートフォンには、いつの間には沢山のクラウドが届いていた。
授業が終わってから夕食の時間の前までは、毎日多くのクラウドのやりとりがされる。この時間に皆が興味を持ちそうな話題のクラウドを送ると、瞬く間にリクラウドされて広がっていく。
だから、いつもならスカリムの一番忙しい時間だ。でも、今日彗太はそんな気分にはなれそうにない。
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