第1章

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 声がする方を見ると、皺くちゃなお爺さんが居た。口髭をたっぷりと伸ばし、髪も長いけれど僕みたいに顔が見えないわけじゃ無い。見える毛全てが白。それだけ長く生きた事を教えるようだった。なのに清潔感が見えるようだった。目元の皺、頬に刻まれた皺が、パウンド先生も歳をとればこうなるのではないかと思えた。笑顔によってのみ出来る皺である。  「人生というものはのう、何かに例えられるようなものではないのだじゃよ。そうじゃった、そうじゃったワシは、通りすがりの出すぎた爺じゃ。名前はドラヤキというんじゃよ」  お爺さんはまるで、さっき有った事が分かる様に僕に話しかけてきた。預言者? 今はもう書物しか残っていないと言われている、絶滅した者ではなかっただろうか? その血を受け継ぐ者達は皆、占いをして、その報酬で生活をしている。未来を見つめているのか? 口髭を触りながらお爺さんが僕に何かを言おうとしている事は分かるが、こんな僕に何を言いたいんだろうか?
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