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「あら、おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ」
バタン、と大きな音を立てて扉が閉まる。
言うまでもないが私が思いっきり扉を閉めたからだ。
いくらウィザードの私でも目を背けたい現実ってのはある。
「相変わらず手厳しいわね…。でもそんなセリシアも好き!!」
「あの、お願いだから帰ってくれませんかね。私今日は疲れてるんです。」
今度はカチャリと静かな音を立て扉が開かれる。
目の前の現実に頭が痛くなり、額に手を当てる。
どうしてこの人は鍵をかけた家に勝手に居座っているのだろうか…。
「ふふん、それは私がセリシアを愛しているからよ。」
「心読むのも無しです。面倒なので明日にしてくれませんかね…?」
「むぅ、せっかく遥々会いに来たっていうのにぃ!!酷いわセリシア…。」
「貴女の家は真向かいでしょうが。いいから今日は帰ってください、レイスさん。」
はい、この頭のイカれてる馬鹿はシャーマンのレイスさんです。
シャーマンとは、分かりやすく言ってしまえば霊媒師だ。霊との交信、霊の使役、幽体離脱などはお手の物。
相当高位の魔法使いでないと霊術を使えないため、この人は実は凄い人です。馬鹿ですが。
小麦色の肌と白い髪が特徴的な、悔しいが美人さんだ。馬鹿だけど。
「ちょっと、誉めるのか貶すのかどっちかにしてほしいわ。」
「相当誉めてますよ。取り敢えず今日は帰れ、馬鹿。」
「ついに口に出した!?もういいわよぉ…今日は帰るわ…。」
ここで同情してはいけない。つけあがると更に面倒なことになる。
「はい。永遠にさようなら。」
「最近どんどん冷たくなるわね…。もしかして反抗期?」
まさか。私はいつだって純粋無垢ですよ?
厄介な人だが、この場所で一番の魔法使いと言っても過言ではない人だ。
明日は私から会いにいってあげよう…。
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