第1章

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 住職に礼を述べ、お堂の脇を見た。丸い赤石ころり一つ。 割れても斬れてもいない。合掌して礼をして江戸へ戻る。 仇討ちの報せに上様より褒美を頂くも、侍は脱藩を願い出、 その足で再び村に戻った時には秋であった。  剃髪し出家して住職の弟子となり、褒美の金にて祠を祀り 小豆狸大明神として生涯をそこで背負ったかは、はてさて。  ケーン、ケーン。 *ないしょ教えるから、おんぶしてくれろ。 *ないしょ教えるから、おんぶしてくれろ。  ないしょは要らぬ。おぶさってきなさ。  ないしょは要らぬ。おぶさってきなさ。  紅葉が赤く染まった夕暮れに、可愛らしい声がすら。 いまも、ないしょは内緒のままして、おくそげなばと。 命短し言わぬが華よ絵空事。ケーン、ケーン。っとな。
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